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一時、粗鋼生産量世界一を誇った日本鋼管(↓:鞆から東海上に臨む)を瀬戸内の埋め立て地に有する、広島第2の都市、福山の南に位置する漁港。
日東第一景勝といわれたその景観は、松島と較べても見劣りするものではない。
その福山には、過去、盛んに議論された長良川河口堰と同じものが、遥か以前にその芦田川の河口に掛かっている。
長良川の河口堰の問題を議論するマスコミが、何故、この芦田川河口堰の完成前後での様子を取材しなかったのかは、今も全く理解できない。
この芦田川河口近くには、朱色が森に映える国宝五重塔を有する草戸稲荷があり、その門前町として栄えた古代の町並み、草戸千軒が芦田川の中州下から発掘されている。
川は、しじみ、はぜ、うなぎ、カレイの豊富な、夏は泳いでも遊べる豊かな水辺を提供していたが、工場用水の取水を目的に作られた先の河口堰が完成してからは、ただの無生物な濃い群青の水をたたえることになった。
さて、鞆の浦へは、車なら、中国自動車道なら東城IC下車、R182を南へワインディングを50Km下るか、山陽自動車の福山ICで降りる。
福山からは、芦田川の土手沿いに南へ下って行く。途中、グリーンロードという熊ケ峯の山並みハイウエー(今はただ)を回っても辿り着ける。
グリーンロードの上から見下ろす鞆の浦は、そのすぐ向かいの仙酔島と、やや飛島となる走島の点列が青い海にぽっかりと浮ぶ、いかにも瀬戸内らしい風景。
鞆の浦の渡し場から、小さなはしけ(写真のものはホテル仙酔専用船)で仙酔島に渡れる。
ものの3分の距離である。渡った先には国民宿舎やホテルがあり夏は海水浴で賑わう。
船に乗り、渡船場を振り返って見上げたところにある寺が「対潮楼」である。
ここを尋ねると、名物住職が、お茶を振る舞いながら、手慣れた調子で、この対潮楼の窓枠で切った仙酔島と瀬戸内の風景を一幅の絵に見立てて説明してくれる。この口上は、必聴である。住職が元気な内に尋ねた方が良い(^^)。仙酔島では五月に観光鯛網が催され、浜から出る観光船が鯛網漁船に横着して、網上げしたばかりの鯛をその場で買うことが出来る。
鞆の港は小さな街で、歩いてもすぐに回れる。車では、あまりに狭い道筋故、かえって時間が掛る、というより、辿り着けない史跡のほうが多かろう。
竿を持てば、渡船場の石垣で、すぐに小魚が釣れるが、思えば、この海に水を注いでいた芦田の流れの途絶えたことが微妙に魚の影を薄くしているように思われる。
以前はシャコを手ですくえた、豊かな瀬であった。